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BYDのメモ

BYDのメモ。

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2024年

4月19日

ベトナムで「売れるワケない」中国EV、それでもベトナム市場に出ていくしかない中国EV企業の危機的状況

(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)

中国のEV産業がベトナムに攻勢をかけている。中国のEVメーカーである比亜迪(BYD)はベトナムで5月から2モデルを発売すると発表した。広汽埃安(AION)も6月からEVを2モデル発売する。すでに上汽通用五菱汽車(SGMW)はベトナムでの販売を行っており、ベトナム市場に参入する中国のEV企業は増すばかりである。

販売ばかりではない。中国奇瑞汽車(CHERY.UL)はベトナムのゲレシムコ・グループとEVを生産する合弁会社を設立すると発表した。奇瑞汽車の出資金額は8億ドル、工場は中国から近い北部海岸沿いのタイビン省に造る。BYDも昨年(2023年)ベトナムでのEVの生産を開始すると発表している。中国のEV各社はベトナムでの販売や生産に力を注いでいる。

その進出はベトナムでのEV販売とともに、米国やヨーロッパが中国製のEVに関税をかけた場合に、ベトナムから米国やヨーロッパに輸出することを考えたものであろう。中国自身がチャイナ・プラス・ワンを実践している。

ベトナムは中国のEV産業がベトナムに参入することを認めているが、米国やヨーロッパが本気で中国製EVの規制に走った場合、その巻き添えを食らう可能性がある。中国が言うままに投資を受け入れていると、将来の火種になりかねない。

ベトナムではすでにベトナム企業であるビングループ傘下のビンファスト(VinFast)がEVを生産している。ビングループはタクシー会社を設立したが、現在、そこで使用されている全ての車はビンファストのEVである。ただハノイやホーチミン市でビングループのタクシー以外、EVを見かけることはほとんどない。ベトナムでEVが普及し始めたとは言えない状況にある。街に充電スタンドはほとんどない。

前回の本コラム(「自動車市場も大崩壊、ベトナムの深刻な不況が映し出す『中国頼み』東南アジア経済の転換点」)でも指摘したように、不動産バブル崩壊によってベトナムの景気は低迷しており、自動車販売も低迷している。ベトナムの一人当たりGDPは4000ドルを超えて自動車販売が急増する段階に差し掛かっているが、それでも安価なガソリン車でさえ販売台数が伸びていない

そのような状況下で中国製のEVが売れるとはとても思えない。ビンファストのEVの販売も苦戦している。付け加えるなら、ベトナム人は日本人以上に中国を嫌っている。中国製の車を喜んで買うベトナム人など、まずいないと言ってよい。

現在ベトナムと中国は蜜月状態にあるが、その最大の理由はグエン・フー・チョン書記長が親中派であるためとされる。ただ書記長の胸の内は分からない。政権基盤の弱い書記長は中国の支援によって政権を維持しており、その見返りとして親中派を表明しているに過ぎないとの見方もある。両国の間には南シナ海の領有権での対立があり、その関係は決して良好ではない

このような背景があるために、中国のEV産業がベトナムに進出しても、短期間で成功する確率は低い。ゼロと言っても良い。遠い将来を見据えての投資であろうか。

しかし中国のEV産業は、ベトナムでの遠い将来を考えて投資する余裕などないはずである。EVが売れるようになってから進出すればよいだけの話だ。なにも今進出する必要はない。

中国のEV産業は同国の不動産業界と同じような体質を持っている。国家の方針に従って事業を展開しているに過ぎない。経営者は市場ではなく政府を見ている。現在中国の不動産業はバブルが崩壊して困難な状況に陥っているが、その原因は政府が作り出したと言ってもよい。

EV産業のベトナム進出は中国の不動産開発に重なる。現在EVは政府が強く推進する産業であり、補助金が豊富に投入されている。その普及が容易になるように法律の整備も進んだ。習近平政権はEVによって世界の自動車産業を制覇しようとしている。中国のEV産業の経営者はその方針に従っているだけであり、確たる確信があって事業に取り組んでいるわけではない。

中国で過剰生産になっているEV産業のはけ口をベトナムに求めている。このところ習近平政権はベトナムに甘い顔を見せている。いろいろな場面で友好を演出しているが、その甘い顔にはEV産業のはけ口としてベトナムを狙っていることも含まれていよう。中国の外交戦略はいつも単純であり、その真意が見え見えである。

中国の失敗の本質は、振興すべき産業を政府が勝手に決めることにある。産業政策は政府の思い込みに基づいており、市場を無視している政府主導の経済運営は一見効率的に見えるが、長期的に見ると不効率なものを大量に生産してしまう中国の住宅や新幹線網はその代表であろう。

ベトナムに進出した中国のEV企業が成功するとは思えない。それほどの時間を経ることなくベトナムから撤退することになろう

2023年

11月19日

Hello, e-Life! BYD JAPAN ステートメント

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11月18日

巨大な本社を直撃取材! 中国で感じたBYDの底力と“BEV先進国”の現在点

11月17日

BYDだけじゃない! “中国EV”は日本で売れるか

11月16日

西武バスに大型EVバス「K8」2台を納入

大型電気(EV)バス K8

BYD、日本市場向けに開発した中型電気バス「J7」発表会 小型、中型、大型と電気バスのフルラインアップが完成

11月15日

【BYD】EV販売台数世界一 中国・深センの本社にカメラが潜入 街中のいたる所に充電スタンドが (2023年11月15日)

BYDが中型電気バス『J7』を発表…日本専用に開発、2024年1月から予約受付をスタート

中国BYDの「EV販売台数」がテスラに肉薄の凄み

10月30日

【中国EV市場の今】テスラ「1人勝ち」に陰り、格安EVや新興EV「3強」が追い上げる(2021/6/23)

中国EV市場では、これまでテスラ「1人勝ち」のイメージが強いですが、今年に入ってから変調がみられています。格安EVの「宏光MINI」が「テスラ超え」となったほか、中国のEV最大手BYDや新興EV「3強」(ニオシャオペンリーオート)も追い上げをみせています。その実態と関連各社の業績動向や事業戦略についてご紹介します。

図表1:主な言及銘柄

銘柄株価(6/22)52週高値52週安値
比亜迪(Byd)(01211)223.20香港ドル278.40香港ドル57.40香港ドル
蔚来汽車( ニオ)Inc ADR(NIO)44.10米ドル66.99米ドル6.50米ドル
シャオペンADR(XPEV)39.99米ドル74.49米ドル15.00米ドル
リーオートADR(LI)28.93米ドル47.70米ドル14.31米ドル
五菱汽車(00305)1.90香港ドル4.43香港ドル0.29香港ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1EV化は世界的な流れ、先行している中国では加速の勢い

EV化は世界的な流れ

2016年にパリ協定(地球温暖化対策のために合意された国際的な枠組み)が発効してから、世界は脱炭素に向けて動いています。中国は2020年9月に二酸化炭素の排出量を2060年までに実質ゼロにする「カーボン・ニュートラル」を目指すと表明しました。米国は2020年11月にパリ協定から脱退しましたが、バイデン大統領の就任で今年2月に復帰しました。バイデン大統領は脱炭素を全面に打ち出しています。欧州や日本も2050年までに「カーボン・ニュートラル」の目標達成を目指しています。

脱炭素はもはや世界的な一大潮流になっています。それを背景に自動車のEV(電気自動車)化が進んでいます。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のEV保有台数(※1)は2020年に1,000万台を突破しました。COVID-19の影響で自動車販売が16%減少しているにも関わらず、EV保有台数は前年に比べ41%増加しました。国・地域別のEV保有台数では中国が首位で、世界全体の5割弱を占めます。次いで欧州、米国となっています。

  • ※1:IEAの統計ではBEV(純電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)の合計をEVとしています。

先行している中国ではEV化に加速の勢い

中国の自動車販売は今年、コロナ禍の反動増もあり、回復が続いています。中国乗用車市場情報連合会(CPCA)のデータによると、1-5月累計の自動車販売台数は前年同期に比べ4割増加しました。うち新エネルギー車(※2)の販売台数は77.6万台で前年同期の2.4倍になりました。その結果、自動車販売台数に占めるEV(BEVとPHEVの合計)の比率は2020年の5.7%から9.3%に上昇しました。

  • ※2:中国ではBEVとPHEVに加え、水素などの燃料電池車(FCV)を合わせて新エネルギー車としています。ただ現状、FCVは極めて少なく、実質的に新エネルギー車はほぼBEVとPHEVの合計となっています。

図表2:中国の自動車販売台数に占めるEVの比率

  • (注)2025年(目標)は新エネルギー車の目標です。
  • ※中国乗用車市場情報連合会(CPCA)、「新エネルギー車産業発展計画(2021-2035年)」を基にSBI証券が作成

中国政府は昨年11月に公表した「新エネルギー車産業発展計画(2021-2035年)」で、2025年までに自動車販売台数に占める新エネルギー車の比率を20%に引き上げることを目標に掲げました。中国の自動車業界団体は25%の達成も可能とみています。

今年通年の販売台数見通しについて、CPCAは240万台と予測しています。4月時点では220万台を予測していましたが、6月に上方修正した格好です。4月と5月の販売動向を受け、下期はさらなる販売拡大を見込んだものとみられます。

2中国のEVブームの現状と主なプレイヤー

EVブームの現状

EV化加速に対する期待を背景に、中国では空前のEVブームとなっています。今年に入ってからハイテク大手がこぞって、EV参入を表明しており、注目を集めています。中国EV最大手BYDの王伝福・会長は今年1月に、中国のEV市場は戦国時代に入ったとの見方を示しました。

図表3:今年にEV参入を表明した主なハイテク企業

企業名備考
アリババ新興EVメーカー「シャオペン」の初期投資家。今年1月に上海汽車、上海張江高科学技術園区と共同でEVメーカー「智己汽車」を立ち上げた。
バイドゥ今年1月に自動車製造への進出を発表。同社は自動運転システムの開発で業界をリードしており、既に2020年10月にロボットタクシー・サービスを北京市で開始。
テンセント新興EVメーカーの「ニーオ」の初期投資家。今年3月にテンセント傘下の北京梧桐車聯科技はEVメーカーの恒大新能源(エバーグランデNEV)と共同で主に車載用ソフトを開発する新会社を設立。
小米今年3月にスマートEVへの参入を発表。雷軍CEOがEV部門の責任者を兼任し、今後10年で100億元を投資する計画。
ファーウェイスマートカー部品の研究開発などに今年10億ドルを投資する計画。今年4月、ファーウェイ旗艦店で「SERES SF5(賽力斯SF5)」車種を販売開始。「賽力斯SF5」は中堅EVメーカーの重慶金康賽力斯汽車とファーウェイのコラボ車でファーウェイの自動運転システムを搭載している。ファーウェイのEV参入はEVへのソフトウェア・部品供給と自社の販売網を通じたコラボ版EVの販売が二輪戦略となっている。
奇虎360ネットセキュリティ大手。今年5月に新興EVメーカー「Neta汽車」へ資本参入。
  • ※Bloombergおよび各社資料・報道を基にSBI証券が作成

振り返ってみると、これまでの中国EV市場は補助金頼りで発展してきた側面が強く、一時は補助金狙いで参入する企業も数多くありました。しかし今回のEVブームは、時代を切り開いてきたハイテク大手がそろって参入している点からすると、過去とは次元が違うと言えます。

なぜ、ハイテク大手はEV参入に意欲を示しているのか。主な要因は、以下3点と考えられます。
1)EV化は一大潮流となっており、莫大なビジネスチャンスが期待できる。
2)中国のEV市場は補助金頼りから脱却しつつあり、実需が高まってきている。
3)EV化は単なる電気自動車だけでなく、自動運転やコネクティッドなど「EV+ソフトウェア」の流れに変わってきている。

実際、ここ1-2年の販売動向からは、自動運転やコネクティッドによる利便さ、ブランド・個性を重視する車種が販売を伸ばしている傾向がみられています。端的にいうと、魅力的な商品であれば補助金の有無に関わらず買う顧客が増えています。新興EVメーカーが販売を伸ばしてきたのは、このような需要の変化が背景にあります。

主なプレイヤーと売れ筋車種

中国EV市場の主なプレイヤーは、地場の既存自動車メーカーと新興EVメーカー、外資系メーカーに分けることができます。地場の既存自動車メーカーはEVのパイオニア的存在であるBYDに加え、同じく民営企業の長城自動車などがあります。新興EVメーカーはトップランナーのNIO(ニオ)を筆頭とする新興EV「3強」( ニオシャオペンリーオートに加え、威馬汽車、Neta汽車などがあります。外資メーカー(含む合弁会社)はテスラやトヨタ自動車、BMW、ゼネラル・モーターズ(GM)などがあります。

2020年の中国EV市場シェアをみると、1位は上海GM五菱汽車(上海汽車・GM・広西汽車3社の合弁会社、未上場)、2位はテスラ、3位はBYDとなっています。新興EVメーカーのニオは7位で、初めてTOP10入りを果たしました。

図表4:中国EV市場シェア(2020年)

  • ※中国乗用車市場情報連合会(CPCA)のデータを基にSBI証券が作成

1位の上海GM五菱汽車は主に低価格帯の小型EVを製造してします。代表車種の「宏光MINI」販売価格(約50万円弱)はテスラの「モデル3」標準グレードのわずか1割強程度で、手軽さと安さで地方都市や農村地域で販売を伸ばしています。そのほかのメーカーの場合、BYDや広州汽車、長城自動車など中国企業は主に中低価格帯EV、 ニオはテスラと同じく中高価格帯EVを製造しています。

中国のEV市場で最も売れている車種についても確認してみたいと思います。まず、2019年と2020年の車種別EVランキングTOP10を比較してみると、以下3つの特徴があります。
1)2019年はランク外だったテスラの「モデル3」が2020年に1位に躍進した
2)リーオート ニオなど中国新興EVメーカーの代表車種が2020年にTOP10入りを果たした
3)2020年7月に販売開始した低価格帯の「宏光MIMI」の販売台数がテスラの「モデル3」に迫る勢いになっている

図表5:車種別EVランキングTOP10(2019年と2020年)

2019年2020年
車種メーカー販売台数車種メーカー販売台数
1北汽EUシリーズ北京汽車111,125テスラ モデル3テスラ137,459
2BYD「元」EVBYD61,551宏光 MINI上海GM五菱112,758
3宝駿新能源上海GM五菱48,098欧拉 R1長城汽車46,774
4奇瑞eQ奇瑞汽車39,401Aion S広州汽車45,626
5BYD「唐」DMBYD34,084BYD「秦」EVBYD41,219
6BYD e5BYD32,929奇瑞 eQ奇瑞汽車38,249
7Aion S広州汽車32,493理想 ONEリーオート32,624
8栄威 Ei5上海汽車30,546BYD 「漢」EVBYD28,772
9欧拉 R1長城汽車28,498NIO ES6NIO(ニオ)27,945
10帝豪 EV吉利汽車28,447BMW5シリーズ PHEVBMW23,433
  • ※中国乗用車市場情報連合会(CPCA)のデータを基にSBI証券が作成

1)テスラの「モデル3」については、テスラが2019年末に中国の現地生産に切り替えてから、販売価格を数回にわたって引き下げたことが販売拡大に寄与しました。それにより、「モデル3」は高嶺の花から手の届くEVとなり、中国の自動車メーカーが販売している一部の中高価格帯EV(およそ30万元前後)と競合することになりました。

2) ニオリーオートなど新興EVメーカーのTOP10入りは、2015年に設立した2社にとって快挙と言えましょう。両社はともに中高価格帯EVを製造していますが、 ニオのほうがプレミアム市場(およそ35万元-60万元)に特化しています。一方、リーオートの代表車種「理想ONE」の販売価格は約30万元で、テスラの「モデル3」を意識した値段設定とみられます。テスラと真っ向勝負を挑んでいるようにもみえます。

3)販売台数でテスラの「モデル3」に迫る「宏光MINI」の販売価格は3万弱-4万元と、EVとしては破格な値段です。日本でいえば「軽自動車」に相当するEVと言えます。手軽さと安さで、日常の足として地方都市や農村地域で販売を伸ばしています。一部の地方都市がEV新興策として無料の駐車場を提供しているほか、充電ステーションを整備していることも販売拡大につながっています。

「宏光MINI」の勢いは今年上期も続きました。2021年1-5月累計の販売台数をみると、「宏光MINI」はテスラの「モデル3」を超え、1位となりました。なお、CPCAは1-5月累計のデータではTOP15まで発表しています。詳細は下記の通りです。

図表6:車種別EVランキングTOP15(2021年1-5月累計)

2021年1-5月累計
車種メーカー販売台数
1宏光 MINI上海GM五菱汽車128,796
2テスラ モデル3テスラ68,330
3テスラ モデルYテスラ34,557
4BYD 「漢」EVBYD32,862
5Aion S広州汽車26,383
6欧拉 黒猫長城汽車25,486
7奇瑞 eQ奇瑞汽車24,464
8奔奔 EV長安汽車22,770
9理想 ONEリーオート22,441
10小鵬 P7シャオペンADR(XPEV)14,766
11Neta VNeta汽車14,539
12NIO ES6NIO(ニオ)14,268
13NIO EC6NIO(ニオ)12,154
14BYD 「秦」PLUS DM-iBYD12,107
15BYD 「秦」DMBYD10,981
  • ※中国乗用車市場情報連合会(CPCA)のデータを基にSBI証券が作成

今年1-5月の販売動向をみると、「宏光MINI」のテスラ「モデル3」超えが目を引きます。格安EVの販売台数が中高価格帯EVを上回ったと印象付けるような出来事です。ただ実際、テスラ以外の中高価格帯EV、例えばBYDや中国新興EV「3強」も合わせると、TOP15では中高価格帯EVの販売台数が多いです。したがって、格安EVのテスラ越えよりも、格安EVに加えて、BYDと新興EV「3強」の台頭が1-5月の特徴と言えましょう。

4位にランクインしたBYD「漢」EVの販売価格はおよそ30万元弱で、値段設定でみるとテスラの「モデル3」と競合します。昨年半ばに打ち出しており、BYDの「中低価格帯ブランド」イメージの払拭に向けた新車種です。BYDはPHEVにも力を入れており、新たに打ち出したDMシリーズは2車種とも15位内にランクインしました。

新興EV「3強」の代表車種であるリーオートの「理想ONE」、シャオペンの「小鵬P7」、ニオの「NIO ES6」は、それぞれ9位、10位、12位に入りました。2020年9月末から納車を開始したニオの新車種「NIO EC6」(販売価格は40万元弱)は13位でした。

5位から8位は、中国の既存自動車メーカーである広州汽車や長城汽車などが打ち出したEV製品です。販売価格はおよそ5万-20万元で中低価格帯EVに属します。

11位にランクインした「Neta V」は新興EVメーカーの「Neta汽車」(未上場)の代表車種です。販売価格は6-7万元で、中高価格帯EVを展開する新興EV「3強」とはターゲット層が異なります。「Neta V」の販売価格は格安の「宏光MIMI」よりは高いものの、同じく低価格帯EVと言えましょう。

全般的にみて、今年1-5月は低価格帯EVと中高価格帯EVがともに大幅に伸びました。2020年と大きく異なるのは、中高価格帯EVの市場でテスラ「1人勝ち」の構図がやや変わってきたことです。特に目立つのは、テスラに触発され、6-7年前にEV参入を果たした新興EV「3強」が販売を伸ばしている点です。また、遅ればせながら中高価格帯EVへ本格参入を実現したBYDも堅調でした。テスラが安全性問題をめぐるトラブルなどで販売鈍化に見舞われているなか、BYDや新興EV「3強」が急速に追い上げています。

なお、中国EV市場は依然として競争が激しく、1年や半年単位で「王者」が変わる可能性があります。その意味で5年後や10年後の「王者」を予測することは難しいと思います。ただ、EV市場全体の規模拡大が予想されるなか、「王者」にならなくても上位のシェアを獲得できれば、事業および業績の拡大が期待できます。そのうち、低価格帯EVに特化しているメーカーよりも中高価格帯EVを強化しているメーカーのほうがより恩恵を受けそうです。高価格帯EVは比較的粗利益率が高く、将来予想される補助金の完全撤廃による衝撃を受けにくいとみられるからです。既に一定の実績を示しているBYDや新興EV「3強」は注目に値すると考えます。

3代表的なEVメーカーの業績動向と事業戦略

図表7:代表的なEVメーカーの業績動向と事業戦略

銘柄名・企業名市場業績動向・事業戦略等
比亜迪(Byd)(01211)香港BEVとPHEVを含む新エネルギー車の販売台数は8年連続で中国首位。部門別売上高構成比(20.12期)は自動車・関連製品が53%、携帯電話の部品・組み立てが39%、二次電池・太陽光発電が8%です。21.12期1-3月期は売上高と純利益がともに前年同期の2倍に拡大。BEVなど新エネルギー車の販売台数が同2.5倍の5万4751台となり、好業績に寄与しました。販売速報によると、4月と5月は合わせて5万8462台で、販売回復は続きました。
・今後の事業戦略は、1)高級EVブランドを強化(同社は大衆車が主力)、2)PHEVでは独自の「DM」(デュアルモード)技術による動力性能・経済性を追求した車種を強化、3)欧州でのEV拡販、4)半導体事業のスピンオフ上場/資金調達による外販の強化です。同社は車載用半導体のIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)分野で中国最大手です。半導体事業のスピンオフ上場は既に株主総会で可決されました。
蔚来汽車( ニオ)Inc ADR(NIO)米国・新興EVメーカーで2018年に上場。21.12期1-3月期は依然赤字ですが、調整後EPSは-0.23元と、前四半期の-0.93元より損失幅が縮小しました。主に粗利益率の改善が寄与しました。1-3月期の決算発表時に提示した4-6月期の販売台数ガイダンスは2.1-2.2万台と、やや保守的です。受注は堅調だが、半導体不足の影響は5月中旬まで続くと見込んでいます。なお、4月と5月の販売実績は合わせて1.4万台で、ガイダンス通りに進捗しているもようです。
・事業戦略の特徴は、1)プレミアム市場に特化、2)「電池交換式」の採用、3)「車体のみ購入+電池はリース(BaaS)」の販売形態です。2020年に導入した3)販売形態の売上高構成比は6割(20.12期)に達しています。今年1月に市販車4車種目となる新型セダン「ET7」(最新の自動運転テクノロジーを採用)を発表。22.12期1-3月期に納車開始の予定です。欧州進出も進めており、今年9月にノルウェーで旗艦SUV「ES8」の納車を開始する予定です。
シャオペンADR(XPEV)米国・新興EVメーカーで2020年に上場。21.12期1-3月期は依然赤字ですが、赤字幅は前四半期に比べ縮小しました。EV販売台数が前年同期の6倍(1.3万台)になったほか、自動運転ソフト「XPILOT」のアップグレード販売が初めて売上計上となり、利益率改善に寄与しました。1-3月期の決算発表時に提示した4-6月期の販売台数ガイダンスは1.55万-1.6万台です。4月と5月の販売実績は合わせて1.1万台で、スポーツセダン「P7」シリーズが販売をけん引しています。
・事業戦略の特徴はスマートEVをコンセプトに、自動運転ソフトの開発に力を入れており、自動運転ソフトのアップグレード販売も行っている点です。今年4月に市販車3車種目となる新型セダンの「P5」を発表。自社の自動運転ソフト「XPILOT」3.5を搭載し、世界で初めて「LiDAR」(自動運転の目として欠かせないセンサー)を標準装備する量産型EVとなる見込みです。納車開始は21.12期10-12月期の予定です。
リーオートADR(LI)米国・新興EVメーカーで2020年に上場。21.12期1-3月期は前四半期の黒字から一転して純損益で赤字になりました。ただ、前年同期よりは赤字幅(一時的な損益などを除いたNon-GAAPベース)は縮小しました。なお、前四半期の黒字達成は主に短期金融商品への投資などによるもの、本業のEV製造ではほかの新興EVメーカーと同様、依然赤字です。現在1車種(「理想ONE」)のみ展開しており、1-3月期の販売台数は1.3万台です。4月と5月の販売台数は合わせて9,862台です。
・航続距離やインテリジェント化で差別化を図っています。現在のラインナップは中高価格帯EVの1車種だけですが、将来的により幅広い価格帯のEVを展開する予定です。今年5月に自主開発の先進運転支援システム(ADAS)を標準装備する「理想ONE」シリーズのニューモデルを発表。既に予約販売を開始しており、会社側は6月からの納車と発表しています。
上海GM五菱汽車未上場・2002年に設立された上海汽車とGM、広西汽車(旧社名:柳州五菱汽車)の合弁会社。3社の出資比率はそれぞれ50.1%、44.0%、5.9%です。上海GM五菱汽車は主に小型の乗用車や貨物車、バスなどを製造しています。2020年の総販売台数は160万台で、2018年の206万台と2019年の166万台を下回りました。これまでの主力車種がさえず、販売鈍化が続きました。ただ、2020年7月に販売開始した小型EV「宏光MINI」は大ヒット(2020年に11万台を販売)し、それ以降、注目されるようになりました。
・合弁3社に関連する上場企業は、上海汽車(600104、中国本土上場、SBI証券取り扱いなし)、ゼネラル・モーターズ(GM、米国上場)、広西汽車の傘下企業・五菱汽車(00305、香港上場)です。上海汽車(600104)の20.12期決算で確認してみると、上海GM五菱汽車の自動車販売台数は上海汽車全体の3割を占めますが、純利益ベース(持ち分ベース)ではわずか0.7%を占めます。上海GM五菱汽車の純利益率が1%未満と低いことが主因と考えられます。
・五菱汽車(00305)は自動車部品メーカーで、物流や観光用の電動車両も製造しています。親会社の広西汽車が上海GM五菱汽車に出資している関係もあり、上海GM五菱汽車に自動車部品を供給しています。上海GM五菱汽車は最大顧客(売上高の5割、20.12期)で、かつ最大のサプライヤーでもあります。五菱汽車は四半期決算は発表しておらず、中期と通期のみ公表しています。20.12期決算は純損益ベースで前期より赤字幅は縮小したものの、2期連続の赤字となりました。主に販管費や金利負担の増加が響きました。
  • ※各社資料を基にSBI証券が作成

中国BYD、時価総額で自動車メーカー世界3位に(2022年6月8日)

テスラ・BYD・VW・トヨタの覇権争い 時価総額の勢いに明暗(2023/10/26)

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